愛を知る日まで
そもそも。
真陽が俺の気持ちに気付いていても不思議は無い。
むしろ、気付いて無いはずがない…と、思う。
自分で言うのも何だが、俺は正直者だ。
好きな奴と嫌いな奴ではあからさまに態度が違う。
俺がこの園でまともに言うことを聞くのは真陽と園長である雉さんだけだ。
そこまで明らかな好意を示している俺を嫌うでも無ければ遠ざけるでも無い真陽は、一体俺をどう思ってるんだろう。
無謀な思い込み。淡い期待。
もしかしたら。もしかしたら。
呪文のように繰り返す6文字。
生まれて初めて、好きになって
生まれて初めて、欲しいと思った女(ひと)。
もしかしたら。
それが、この腕の中に落ちてくるかもしれない。
……夢みたいだ。
今まで生きてきて想像もしなかった幸せへの期待に、俺は鳥肌が立つほどだった。
なのに。
それはある日、優しい言葉で無惨に引き裂かれる。