愛を知る日まで
自分でも、無茶をしたと思う。
勝手に電話番号を探したり、バイトを休んでまで無理矢理に真陽のシフトに合わせたり。
けど、どうしても少しでも真陽と一緒に居たくって。距離を縮めたくって。俺は必死だった。
そして、そんな俺の盲目的な情熱が自分を、二人を、結果として追い詰めてしまう事となっても。
俺が夜勤中に真陽にキスをしたのがみんなにバレた日。
真陽は、また泣いてしまった。
「…どうして…あんなコト…。柊くん、ぬくもり 園に居られなくなっちゃうよぉ…」
…だって。だって。
真陽が好きなんだから仕方ないじゃん。凄く凄く好きなんだから。我慢出来なかったんだよ。
分かってる。馬鹿なコトしたって。ぬくもり園、もう行けなくなるだろうって。
でも、それでもいい。真陽にキスした事、後悔したくない。居場所なんか失ったって、真陽の温もりを一瞬でも感じられたならそれでいい。
ただ、真陽に迷惑掛けたくない。これ以上悲しませたくないから。
「俺が全部悪いんだ、真陽には迷惑かけないようにするから。」
そう言った俺の言葉に、真陽は余計に悲しそうに涙を零してしまった。
…どうして?俺、ちゃんと真陽のコト守るよ?どんな犠牲を払ってでも絶対迷惑掛けないようにするから。
しゃくりあげる真陽にどうしていいか分からず、ただ朝の賑わう人通りを避けていると、真陽はとても弱々しい声で俺に告げた。
「…柊くん、…今から部屋に行っていい…?」
俺の待ち望んでいたその科白を。