愛を知る日まで
どっかで聞いた話だけど、悪魔ってのは人間の心が弱ってる時を狙って来るんだってさ。
もちろん悪魔なんて迷信だろうけど、でも。
俺はその言葉は本当だと思う。
「よお、柊。探したぜ。」
ある日バイトから帰ると、アパートの前で俺を待っていたのは招かざる客だった。
「…彰か…?」
数年ぶりに見た彰は相変わらず一目で堅気じゃないのが分かる格好をしていた。
「元気そーだな、てかお前変わんねえなぁ!相変わらず中坊みたいなツラして!」
似合ってない金髪の頭を揺らしながら、アキラはケラケラと楽しそうに笑った。
久々に会っていきなり人が気にしてるコト言いやがって。
俺は招かざる客の失礼極まりない態度にイラついて、そのままシカトして足早に自分の部屋へと向かった。
「おいおい、待てって。せっかく昔の友達が来てやったのにシカトはねえだろ?」
「てめえと友達になった覚えなんざねえよ。」
「はっ!よく言うぜ、誰がお前の童貞捨てさせてやったんだよ。」
思い出したくない借りをたてに取られて言葉に詰まった俺に、彰がニヤニヤ笑いながら近付いてきた。そして
「まあ、冷たくすんなって。今日は折り入って話があって来たんだ。お前、俺の元で働かねえか?」
そう言って、胸ポケットから出した名刺を俺に手渡した。
『××会 三代目◯◯組内△△組若頭 周藤彰 』
そう書かれ代紋の入った名刺を。