愛を知る日まで



「柊、覚えてるか?二年前にお前がボコったチンピラの事。」


彰はもう煙草に火を付ける事はなく真剣に喋りだした。


「ありゃあウチと敵対してる組の下っぱの奴等だったんだ。

あいつらが捕まったせいで芋づる式に薬の出所がバレてなあ。あちらさんてんやわんやで面白れえったらありゃしねえよ。

お前運が良かったな。逆恨みされてタマ獲られてもおかしくなかったんだぜ。」



彰がどうでもいい話をしているのを、俺は掌の火傷を水道で冷やしながら聞き流していた。


何が運が良かっただ。ヤクザが堅気のそれも高校生相手に真剣に逆恨みなんて嘲笑もんだろ。バカバカしい。


「まあ、そんなワケでよ。うちとしてはお前に感謝してるんだよ。意図して無かったとは言え結果的にあちらさんに大ダメージ与えたワケだからな。」


「だから何なんだよ。今さら礼でも言いに来たってのか?」


「まあ早い話がそういうこった。

お前が俺の知り合いだって話したらオヤジも面白がってくれてな。

普通、堅気がこの世界に飛び込むんだったらそれなりに下積みが必要なもんだが、お前なら俺の直属にしてもいいってよ。とんだ優遇だぜ?」


彰はそれはそれは得意そうな顔で俺に向かって言った。手持ちぶたさなのか本当は吸いたいのか、ポケットの中の煙草を手で弄りながら。



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