愛を知る日まで
俺は、手を冷やしていた水道の水を止めるとそのまま彰の向かい側に腰を降ろした。
「勝手に話進めてんじゃねえよ。要は俺にヤクザになれって話だろ。ふざけんな。んなもんに興味はこれっぽっちもねえよ。」
だが、彰は俺の言葉なんか聞いていないかのようにグルリと部屋を見渡して再び俺の顔を見据えた。
「なあ柊。お前も社会に出ていい加減分かっただろ。俺達みたいな人間に居場所なんか無いって。
親に棄てられて暴力に育てられた俺達がまっとうに生きていけるワケが無いんだよ。何処で何をしたってその過去が付いて回る。
けどな、組は違うぜ。強い心さえあればのしあがっていける。俺達にうってつけの世界だ。」
真剣に話をする彰の目には、俺への仲間意識が浮かんでいた。
「おもしれえよ、この世界は。
柊。俺と一緒にてっぺん目指してみねえか。お前なら出来る。」
…彰は昔っから、俺を仲間に引き込みたがってたっけな。そういや。変わんねえなあコイツ。
俺はそんな彰に呆れつつ苦笑いを溢したが、ヤツの次の言葉には一瞬真剣に耳を傾けてしまった。
「力があればよ、欲しいモノもなんだって手に入るんだぜ。」