愛を知る日まで
「…欲しい、モノ…?」
思わず聞き返してしまった俺に、彰がニタリと笑った。
「ああ、この世界は上に行けば行くほど手に入らないモノはねえ。金か?女か?それともギャフンと言わせたいヤツでもいんのか?」
「………」
普段の俺だったら、こんな馬鹿げた話に乗るはずも無かった。
けど、淋しかったんだ。もどかしかったんだ。
何も、何も出来ない自分が。
真陽が離れていくかも知れないのを、ただ指を加えて待っているしか出来ない自分が。
「…女も…手に入るのか…?」
「おお、そりゃ選り取りみどりだ。幾らでも紹介してやるよ。ははっ、相変わらずお前スケベだなぁ」
嬉しそうに笑う彰に、俺はムキになって否定した。
「ちげえよ!そういうんじゃない、特定の女が欲しいんだよ!」
「なんだぁ。ってーと惚れた女でもいるって事か?」
益々嬉しそうに俺を見る彰の目にムカつきつつ、俺は黙って頷いた。
「はははっ、そうかぁ!お前も女に惚れるようになったかぁ!!いやあ良かったなぁ!」
「うるせえ!いいから教えろ!お前んとこに入ったら女が手に入るのかよ!?婚約してる女をモノに出来る方法があるのかよ!?」
遂に笑いだした彰に俺は掴み掛かりながら必死に問い詰めた。
彰はそれでもガキみたいな笑い顔を消さず、コクリと頷いて言った。
「簡単だ。ヤクザは人のモノを奪ってなんぼの商売だからな。」