愛を知る日まで
「…優しい女なんだよ。」
「あ?」
「優し過ぎて、俺のコト全部受け止めちゃうような女なんだ。
だから、これ以上あのひとに重いモン背負わせたく無いんだ。」
そう彰に答えた俺は、自分でも気付かないうちに微笑んでいた。
不思議と、穏やかで素直な気持ちだったんだ。
きっと、もう迷わないって、真陽を信じられるって、思えたから。
俺の、そんな気持ちは彰にも伝わったみたいで。
彰は、苦笑いを溢すと一回俯いてから大きく空を仰いで息を吐いた。
「あーあ、しょうがねえなあ!お前とは一生やり合いたくねえと思ってたんだけどなあ!」
「いいじゃねえか、あんたとはこれが最初で最後の喧嘩だ。」
俺が一歩後ずさって構えると、彰はそのまま後ろに下がって子分二人が前に出た。
「なんだよ、彰はやらねえのかよ。」
「極道っつーのは上に行けば行くほど自分の手を汚さねーんだよ。」
「なんだそりゃ、つまんねーな!やっぱヤクザなんか俺には向いてねーや。」
「だな。」
そう言ってケラケラと彰が笑った。俺も笑って、しばらくすると彰がポケットから煙草を取り出して火を着けた。
「わりいな、柊。一応ケジメはつけさせてもらわないとな。」
「分かってる。さっさと来い。」
そう言った俺に彰が頷いて目を伏せると、それを合図に子分の男二人が俺に向かって来た。