愛を知る日まで
「…いてて…やっぱホンモノのヤクザはつえーや」
戻った自分の部屋で俺は、散々殴られて腫れた顔を冷やしていた。
暴力がプロの男二人相手にはさすがの俺もいいようにボコられてボロボロだ。けど。
全身アザだらけでも五体は満足だった。こっちは腕の一本も折られる覚悟だったんだけどな。
正直、助かったよ。ぬくもり園の夏祭り準備があるから折られたら困るなとは思ってたんだ。
…多分、手加減してくれたんだろう。彰なりに優しさだったのかも知れない。
「…あいつ、俺以上に不器用だよな。」
宛どなく呟きながら、顔を冷やしてるのと逆の手でカラーペンを動かした。
『 招待状
トマトが実をつけました。
ぜひ食べに来て下さい。』
「そうだ、絵も書いてやろう。ちんちくりんの似顔絵書いてやろっと。」
これ見て、真陽どんな顔するかな。
それを考えるだけで楽しくて、勝手に鼻歌が零れる。
「真陽が来るまでに顔の腫れひくといいなあ。」
その日を待ち遠しく思いながら、俺は痛む頬を濡れタオルで冷やしながら真陽への招待状を書いた。