『短編』秘密
放課後、君が初めて理科準備室にやって来た時のことはよく覚えている。
さらさらな栗色の髪と白い肌、そしてモスグリーンのダッフルコートがとても似合っていてかわいいと思った。
「わからないことがあって」
「君、何組?」
「C組です」
「ああ、高山先生のクラスね。今日高山先生、午後から出張なのよ。私で良ければ答えるけど」
「ちょうどよかった。先生に教えてもらいたかったんだ。高山先生の説明じゃどうせわからないから」
「そんなことないでしょう。高山先生、ベテランなんだから」
「あの人は頭が良すぎるんだ。自分はくどくど説明されなくてもわかっちゃうから、理解できないってことが理解できないんだよ。だから説明がへたくそなんだ」