『短編』秘密
わからないことはなかった。
高山先生は一流の国立大学出身の優秀な人だった。
本人はそのつもりはないのかもしれないが、このくらいはわかるよね、というハードルが高い。
そしてそれが、上から目線に感じる。
なんとなく教師になってしまった、と言っていた。
公務員だから安定しているし、高校生なら自分の得意な科目だけ教えていれば済むからと。
三流大学で必死に勉強し、念願かなってようやく教師になれた私にとって、その台詞は自分をバカにされた気がした。
だから、私は努力している。
持って生まれた脳みその素質は三流かもしれないが、教師としては一流になってやろう、化学の楽しさを生徒に伝えよう、その思いでここまでやってきたのだ。