『短編』秘密
「なんの話?」
高山先生の件は、しらを切りとおそうとした。
「ごまかしたって駄目だよ」
「なにもごまかしてなんか」
すると君は壁際に追いやった私の前髪をそっとかき上げ、その手で頬を撫で、首筋を撫でた。
「僕は、ずっと先生のことが好きだったのに。あんなの見せられたら、おかしくなるよ」
私をまっすぐ見つめる君の瞳が揺らいでいるのがわかった。
苦しそうな表情に、胸が締めつけられる。
「ねぇ、僕じゃだめ?」
華奢な指で私の頬を包む。
「な、なにを言っているの。大人をからかうものじゃないわ」
「からかってなんかいない」
君が真剣なのは、わかっていた。
私の頬に触れた手が、かすかに震えていたから。
だけど。
「もう帰りなさい。私は明日の授業の準備があるの」
「嫌だ」
「だめよ」