もう泣かないよ
★電話
目を覚ますと、隣に奏太の顔があった。
もう慣れてる筈なのに、プロポーズのあとだと、妙に緊張して、恥ずかしい。
起き上がろうとして、動けないことに気付いた。
背中に、奏太の浅黒い腕が回されている。高校時代は華奢だった腕は、漁師生活のせいか、がっちりして筋肉がついていた。
がっちりした腕に抱きしめられてるんじゃあ、こりゃ動けないわけで。
「奏太…っ、動けないよ」
私が言うと、奏太が目を開けて、悪戯な笑みを浮かべた。
「おはよ、海」
おはよ、という前に、奏太にキスされて、のどまで出かかった言葉は消えていった。
「ん…っ」
奏太は、夜の間と、キスの時だけは、意地悪になる。
あ、また奏太の欠点見つけちゃった。