もう泣かないよ
★
アパートの外で、奏太は港へ、私は食堂――ってゆぅか家に戻った。
私は、左手の薬指を太陽に翳(カザ)した。
もらったばかりの指輪が、光を跳ね返す。
「綺麗…」
私は呟いてから、スマホを鞄から出した。
プロポーズされたことを、親友に話したくて。
『あれ?海、どうかしたの?』
受話器の向こうから、親友、大野美里の声が聞こえた。
「うん、すごくいいことがあったの!」
美里は、私のお兄ちゃんのカノジョなんだ。だから、親友って以外でも付き合いがあるわけで。
二人が結婚したら、姉妹になるのかなぁなんて考えたりしたこともある。
『またのろけ話ぃ?』
「…実はね、プロポーズされたんだ♫」