もう泣かないよ


               ★

 海が帰った後、俺は睡魔に襲われて眠った。

 夢は見なかったが、何かがずっと俺に呼びかけていた。

――来いよ。俺たちの海に、来いよ。男だろ?

 その声は、健太の声によく似ていた。

――逃げんのかよ?男なら、来いよ。待ってやっからよぉ。

 俺は、ハッと目を覚ました。

 何だ――夢、か。

 寝返りを打ったとき、また声が聞こえた。

――なんでこねぇんだ?逃げるなら、お前は男じゃねぇ。

 空耳だろうか?

 俺は耳を塞いだ。


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