もう泣かないよ




 そのとき、左肩を何かに押された。

 俺は、左側を見た。

 誰かが、いた。

「ど……して………が!?」

 同時に、全身に冷たい感触。

 俺、海に落ちたんだな―――。

 水平線が、遠ざかって行く―――。

 息ができない。

 苦しい!

 俺は、目を閉じた。

 右足は依然として動かなくて。

 浮上することは叶わない。


 
< 28 / 96 >

この作品をシェア

pagetop