もう泣かないよ
『神奈川の総合病院まで来て!奏太、意識はないけどまだ、生きてるから!』
生きてる
その言葉に、私はホッとした。
私は落としたスマホを拾い上げ、
「神奈川の、総合病院?」
病院の確認をした。
『そうよ――急いできて!』
私は頷いて、それから服を着替えた。
スマホをポケットに押し込んで、財布を握ると、家を飛び出した。
ちょうど道を通りかかったタクシーに乗り込んで、行き先を告げる。
「飛ばしてください」
私の頼みに、運転手さんは訝しげな顔をした。直接は見えないけど、ミラー越しに、不機嫌そうな顔が見える。
「婚約者に会えないかもしれないんです」
私の言葉に、運転手さんは「わかった」と言ってくれた。