もう泣かないよ




 病院の入り口前に、美里がいた。

「奏太は!?意識戻った!?」

 私が早口でまくしたてると、美里は首を横に振った。

「まだよ…。まだ、意識が戻らないの」

「なんで、こんなことになったの!?」

 美里の肩を掴んで聞くと、

「さっき、電話でも言ったけど…海に落ちたのよ。飛び込んだのか、事故なのかわかんないけど…近くを通りかかった雨宮さんが奏太を見つけなかったら、手遅れだったそうよ…」

 どうして…?

 婚約したばかりなのに。

 なんでこんなことに―――

「元気だしなよ、海。奏太は、絶対に助かるってば」

「……うん」


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