もう泣かないよ
私は深呼吸して病室に入った。
アルコールのにおいが漂う病室の真ん中に奏太がいた。
頭に白い包帯を巻いている。
痛々しい姿に涙が止まらない。
「奏T――「泣くなよ、海。泣かれたら、俺が困る」
奏太が呟く。
私は奏太の右側まで歩いて行った。
奏太の左手が、私のスカートのすそを掴んだ。
「ごめんな、海―――約束果たせなかった…夢…叶えて…やれなかっ、た」
だんだん途切れ途切れになってゆく奏太の言葉に、胸の鼓動が早まる。
「何言ってんの!まだまだ、これからじゃない!これから、夢かなえてけばいい!約束果たしてけばいいじゃない!」