もう泣かないよ
★「ありがとう」
本当は、わかってるんだ―――。
この言葉が、何を示すのか―――。
そんなこと、本当は知っている。
それでも、儚い希望を捨てられない。
「奏太は、助かるんだから!ね、そうでしょ!」
私の言葉に、奏太は、にっこりとほほ笑んで見せた。
「海…―――」
奏太が、呟く。
本当は私みたいにいつも通りの大きさの声で言ったんだと思う。
でも、もう声を出す気力さえ残ってないんだ。
「――――――ありがとう」
私は、奏太の酸素マスクに耳を寄せた。