もう泣かないよ
遺影の中の奏太の表情は笑顔なのに、どこか暗い顔で。
私の知っている奏太の笑顔はもっと明るくて、眩しかったのに。
私は、遺影の中の奏太に心の中で語りかけた。
『どうしてあんなことになってしまったの…?事故なの?自殺なの?教えてよ…。なんで私を置いて行ったの?』
だけど、遺影の中の奏太が返事をしてくれるはずもなくて。
私は、奏太の実家の二階に上がった。
付き合い始めてすぐに奏太は今のアパートに引っ越してしまったから、実家の奏太の部屋に入るのは二回目くらい。
ずっと使われてなかった部屋の床には埃がうっすら溜まっていた。壁には、私の写真や二人のツーショットの写真ばかりが飾られていた。
奏太が好きだったロッカーのポスターはベッド脇の籠に放り込まれている。