もう泣かないよ




 好きなロッカーのポスターを外してまで私の写真を飾ってくれてたことに、私は驚いた。

 部屋の片隅には、ベースが置かれている。

 奏太は、高校時代バンドをやってたんだ。

 水泳部と掛け持ちだったっていうからすごいよね。

 勉強机の上には参考書や教科書や、それから絡まりまくったイヤホンコードの束。

 奏太、昔っから片付け、苦手なんだなぁ…。

 しみじみしていると、ドアが開いた。

「やっぱりここにいた」

 美里とお兄ちゃんが、ドアの前に立っている。

「…」

「焼香くらい、上げてきたら?」

 私は、頷いて、部屋を出た。





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