もう泣かないよ
私の言葉に、幸助は「そうだよなぁー」と呟いた。
「…どうやったら、前向きになれるかなぁー?」
私は近くにあった石を蹴った。
「…」
「幸助はさ、過去を引きずるタイプ?それとも、すぐにふっきるタイプ?」
私が聞くと、幸助はしばらく黙っていた。
「私は、引きずるタイプ。母さんが死んだときだって…」
涙腺が緩んだのがわかった。
泣かないようにしなきゃ。
私は慌てて目をこすった。
「俺は…」
幸助は呟いて、腕を擦る。
ヤバい、聞いちゃいけないこと聞いちゃった。
「引きずってたっていいじゃないか。俺は、過去の事件といまだに踏ん切りをつけられずにいるんだからさ…」