もう泣かないよ
★
「で、話ってなんだ」
休憩時間、父さんが切り出した。
私、疑問だったことがあるの。
奏太がいた頃は、全然気にしてなかったけど、奏太を失った今では、急にそのことが気になりだした。
「六年前、母さんが死んだでしょ?」
私の言葉に父さんは戸惑った顔で小さく頷いた。
「父さんは母さんが死んだ日も、仕事ばかりしてた!なんでなの!?母さんの葬式にも参加しなかった!父さんは、母さんのこと本当に好きだったの!?大事だったの!?」
静かに聞くつもりだったのに、一言切り出した途端、抑えていた感情が一度に溢れだした。
「海」
「きっと母さんは、不幸せだったんだろうなぁ…夫に最期さえも看取ってもらえずに!」
そう叫んだ私の頬を、父さんがぶった。