もう泣かないよ



「なんだ、海か」

「何よ、その『なんだ』って!失礼じゃない」

 私が文句を言うと、幸助は「まぁまぁ」と苦笑した。

「とりあえず、早く会計してくれる?」

 私が言うと、幸助は慌てて仕事を始めた。

「海、このあと時間ない?俺、暇だからさ」

 この通り閑古鳥が鳴いてるから、と幸助が付け足す。

「時間ない。お店戻らなきゃ」

 私が言うと、幸助はため息をついた。

「あのさぁ、海。奏太死んでから俺に冷たくない?」

 そんなつもりないんだけどな、と私は思った。

「そんなことないよ」

「じゃあ、少しでいいから付き合ってよ」

 仕方なく私は「少しだけね?」と言った。

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