もう泣かないよ



 幸助に連れられて、私たちは港に行った。

 これと言って、特に何もない静かな港。ちょうど、漁に出てる時間帯なのか、船さえない。

「なんで私を呼び出したの?」

 私が聞くと、幸助は大きく背伸びした。

「潮風はやっぱし気持ちいいな!」

 人の話聞いてないし!?

「聞いてるの?」

 私が聞くと、

「なんか言った?」

 幸助はとぼけた。

「聞いてなかったわけ?…も、いい。帰る」

 私は幸助に背を向けた。

「待てよ!今の冗談!」

 幸助が慌てふためいて、私を止めた。

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