もう泣かないよ



 幸助の言葉に、心が痛む。

 奏太には、前科がある。学生の頃、窃盗をしたんだ…。

 それでも私は、奏太のことが好きで…。

「前科がある奴より、俺のが海を幸せにしてやれるのにって何回も思った…」

 幸助はそう言って、ため息をついた。

「けど、海は奏太に前科があっても、それでも奏太のことが好きだって知って、君の一途さに負けたよ…」

 私は幸助を見た。

「私のこと、ずっと考えてくれたんだね…ありがと」

 幸助が、頬を赤らめた。

「あ、あのさ…俺じゃ、ダメかな」

 幸助が呟いた。

「え?」

「俺じゃ、奏太の代わりになれないかな」

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