もう泣かないよ



 私の顔が、急激に熱くなった。

「あ、あの…?」

 幸助は、フッと小さく笑った。

「ごめん。君の傷ついた心の隙間に付け込むなんて俺、情けねェよな…」

 幸助が私に背を向けた。

「でも、今の本心だから、冗談なんかじゃないから」

 幸助はそう言って、店の方向へ歩いて行った。

 残された私は、何回も瞬きを繰り返した。

 それから、私も食堂に戻ることにした。

「……ありがと」

 幸助にそう呟いてから。

 
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