もう泣かないよ


           ☆

 店に帰ると、父さんがレジをやっていた。

「父さん、代わるよ」

 私が言うと、「そうか」と父さんは調理室へ戻って行く。

 私は買った物をロッカー室に置くとレジに立った。

 直後。

 店のドアが開いた。

「いらっしゃいまS――あ!」

 言いかけて、私は思わず声を上げた。

「その笑顔、いくら?」

 入ってきたのは幸助だった。

 さっき別れたばかりの幸助が、食堂の入口に立っている。

「腹減ったから、遊びに来た」

 幸助はそう言って、空いているカウンター席に腰を下ろした。

「幸助、暫くだな」

 お兄ちゃんが幸助に声をかけた。

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