もう泣かないよ



「定食B、一つお願い」

 幸助が注文した。

 幸助は頼んでから私の方を見て、ニカッとほほ笑んだ。

「…!」

 幸助の笑顔に私は理由もなくドキッとした。

「ん?何なにぃ?二人とも恋人同士なわけぇ?」

 お兄ちゃんが私と幸助を見比べて冷かしてくる。

「いや、俺フラれちゃってますから」

 幸助が私の方を見ながら言う。

「まぁ、逆にオッケーしてたら俺、怒るわ」

 お兄ちゃんが言った。

「え?」

「だって、奏太が死んだばかりなのにもう恋人作ったなんて言ったらそりゃ怒りたくなるさ」

 お兄ちゃんの言葉に、「ですよねぇー」と幸助。

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