もう泣かないよ



 私は俯いた。

 幸助は私の方を見て

「ごめんな、さっきは。俺…オマエの心の隙間に付け込んでた」

 と言った。

 タイミングよく、

「定食B、お待ちっ」

 お兄ちゃんが定食を調理室から運んできた。

           ☆

 一時間後、幸助が席を立った。

「俺、そろそろ帰るわ。店長に怒られかねないし」

 そう言って、財布を出す。

 私は幸助に伝票をもらって、レジに打ち込んだ。

「650えN-「ねぇ、その笑顔、いくら?」

 営業スマイルを浮かべて言った私に、幸助が聞いてくる。

「え?」

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