もう泣かないよ
「海のその笑顔はいくらなの?」
私は肩を竦めた。
「わかんないよ、そんなの」
私が言うと、幸助はヤレヤレと言いたげに首を振った。
「ダメだなぁー、無自覚って怖いわぁー」
ムジカク…?それ、何?
「とりあえず、650円。早くして」
私は幸助の後ろに他のお客さんがいるのに気付いて、幸助を急かした。
「せっかちだな」
「ほかのお客様に迷惑だから」
私が言うと、幸助は私の耳元に顔を寄せた。
「また会いに来る」
その言葉に、顔が熱くなった。
奏太に恋した時と、同じくらいに胸がドキドキしていた。