ずっとオレの1番でいてくれますか?
数分後…。
母さんは泣き止んで、オレの着替えを棚に入れたり、花瓶の水を取り替えたりしていた。
じっとしていられないようで、する事がなくなるとウロウロし出した。
「…母さん?なにウロウロしてんの。座ったら?」
オレがそう言うと、母さんは肩をビクッとさせてイスに座った。
でも座ってからも、なぜか母さんは落ち着かない様子だ。
目の前でこれだけ落ち着かない様子で座っている人を見ていると、こっちまで落ち着かなくなってくる。
「母さん!」
母さんはまた肩をビクッとさせた。
「な、なに?」
「“なに?”って、こっちのセリフ。どうしたんだよ。今日なんか落ち着きないよな?」
「そ、、そそ、そんなこと…。」
「ウソついてんのバレバレ。」
オレがそう言うと母さんは困ったのか、うつむいてしまった。
母さんは昔からウソをつくのが下手だ。
ウソをつこうとすると落ち着きがなくなる。
そして必ず首筋に手を添えるクセが出る。
だから母さんのウソはすぐに見抜けるんだ。
オレはふと思った。
たしか千夏はウソをつくとき、胸のあたりで指先だけ合わせるんだよな。
千夏のことを考えると自然と笑みがこぼれた。
それでオレは我にかえる。
「母さん。千夏は?千夏はどこにいんだよ…?」
母さんには千夏と付き合ってすぐに紹介していたからわかるはずだ。
紹介した後も何回か会ってるから顔が分からないと言うことはまずない。
もし同じ病院にいるのなら知っているはずだ。
…。
沈黙が続く。
母さんは相変わらずうつむいたままで、口を開こうとしなかった。
オレは早く千夏の様子が知りたかったからか、無性にイライラした。
「なぁ!母さん。千夏はどうなんだよ?!無事なんだろ?」
オレはベッドから身を乗り出して、母さんの肩をつかんで軽く揺すった。
だいぶ力を抜いて揺すったつもりだったが、母さんは揺すると首をカクカクとさせた。
無表情のまま。