雪降ル夜ノ奇跡
「え、私はその……。」


うろたえるように心菜は言葉を絞り出す。


「…ここのサーカス団で踊り子として小さい頃から使われているの、両親を早くに亡くしさまよい歩いていた所を人買いに見つかって……」


「…そうか、貴女は踊り子なのか」


「はい。あの貴方一体、誰なんですか…?」


はっ、と礼於が顔を上げその女子の顔に視線を合わせる、


「これは失礼致した、名も名乗らずに。俺の名は礼於だ、人の形をしているが妖怪だ」


妖怪…、という言葉を聞いた途端、心菜の顔から血の気が引いた。


「あ、あ。どうかお命だけはっ……!」

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