雪降ル夜ノ奇跡
その言葉に礼於は一瞬面食らった顔をしてから、ぷぷっと吹き出した。


「な!?何が可笑しいのですかっ」


「いや、悪いそんな事を言うとはな。驚いただけだ」

いつも人は俺が妖怪だとわかると気を失うか、一目散に逃げるか、そのどちからだからな、そう言って。


「女子、俺が怖いか?」


しばしの沈黙の後…、


「…いえ、貴方様からは暖かい香りが致します。優しい香りが…。だから怖くなどありません」


「…ふ、そうか。やはり可笑しな女子だ。名は何と申す?」


「心菜です」


澄みきった綺麗な声が狭い部屋に木霊した。
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