青いブレスレット
「山寺」



水原くんが静かに言った。



「俺も雪川さんのこと、前から好きだったんだ。雪川さんが俺のことなんか知らない頃から」



…え?

そうだったの………?



「俺は今まで、彼女ができても、人を好きっていう感覚がずっと分からなかった。彼女に振られても、何も感じなかった。だけど…」


だけど………?



「雪川さんだけは違ったんだ。ただ見かけるだけで嬉しくなったり、勝手に嫉妬したり、次の日会えると思うと眠れなくなったり。俺はおかしくなったのかと思うくらい。
うまく言えないけど、こんな気持ちになるのは雪川さんに対してだけなんだ。だから…」



少し間が空いて、水原くんははっきりとした口調で答えた。



「山寺の気持ちには答えられない。ごめん」



また間が空いて、千夏ちゃんが答えた。



「…分かった」



千夏ちゃんは笑った。

多分、無理やり。



「これであたしも吹っ切れるよ。今度はもっと報われる恋をしなきゃ!」



コツンコツンと、遠ざかっていく足音が聞こえる。



「聞いてくれてありがとう!バイバイ」



キイ………パタン



千夏ちゃんは出て行ったみたいだ。




「………はあ」




水原くんのため息が聞こえる。



やっぱり、自分を好いてくれた子を振るのは気持ち的にも楽じゃないんだろうな。

でも、わたしのために、しっかり断ってくれた。

それが、本当に嬉しかったーーー………。




ガシャン。


気が抜けたのか、わたしは後ろのフェンスにもたれかかってしまった。



…しまった。



水原くんのほうを見ると………



やっぱりこっちを見ていた。
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