青いブレスレット
わたしと千夏ちゃんは顔を見合わせる。


とても、入れる雰囲気じゃない。



「…2階のトイレ行こっか?」


「…そうだね」



その場を立ち去ろうとしたら、思いもよらない名前が聞こえてきた。




「水原くんに断られたの?」



…え?水原くん??



思わず立ち止まって、千夏ちゃんと二人、壁に背中をくっつけて、聞き耳を立ててしまう。



「サッカーのあとに言ったんだよね?」

「うん…ずっと好きでしたって…」



どうやら、中にいる女の子が水原くんに告白したようだ。


水原なんて苗字はあの水原くんしか知らない。




「なんて言われたの?」

「好きな人がいるから、ごめんなさいって…っ」



女の子の泣き声が聞こえてくる。



「えー水原くん、好きな人いたんだ、誰だろ」

「…もしかして、ドッジボールのときずっとかばってた子かなあ」



…わたしのことだ。



「えーあの子!?」

「だって、テニスのとき、あの子だけに水原くん声かけてたもん。それに、水原くんにジュース渡してたよ…?」

「なんで!?あんな子どこにでもいそうじゃん!それはないよ!」

「うん、チカの方が可愛いもん!」



…そっか。


やっぱり、わたしはそんなふうに思われてるんだ。



知ってたはずだけど、改めて聞くと、かなりショックだ。



さっきまでの前向きな気持ちは、どこかへ行っちゃった。
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