Fairy-tale Assassinate
ドタドタと大きな足音に振り向くと、腹の出っ張った旦那サマが短い足で必死に走ってくる。
「な、なんの用ですかな? エルヴィス王太子様?」
「その呼び方は正しくありませんな。兄が位を継いで私が継承権第一位とはいえ、そのつもりは一切ありませんので」
エルヴィス様が軽く返すと、旦那様はだくだくの汗を布で拭う。
旦那サマの前に、ユノさんが立つと迫力で私たちはミリー勢は一歩後ずさった。
「ミリー子爵。貴殿には先日の祝宴の際、我が主・エルヴィス殿の命を狙った疑いがある」
「そ、そんな滅相もない!」
旦那サマがそういう横で、私はひたすら首を縦に振る。
「しかし、今回は特別に貴殿の行いに関して公にすることはしない」
旦那サマの汗を拭く手が止まる。
「その代わりに、貴殿が違法に取り上げた土地を然るべき主に返すこと。そして、使用人を一人、こちらに差し出すことを命じる」