Fairy-tale Assassinate
「心配することはありません」
馬車の戸を開けるユノさんが優しく言った。
「他にもまだ人員を増やすつもりだからな。
ちなみに、保護の印は自然に出来るんじゃなくて、俺が選んだ人間につけるんだけどな」
え?
私はバッと首を押さえた。
「じゃ、じゃまさか…」
「そ。あの時につけたのな」
首筋への、あの小さなキスの時に――
ボンと音をたて、自分が熟れたトマトのようになって、腰が砕けた。
「あらら…」
支えるエルヴィス様。
ユノさんは呆れた様子で私たちを眺めて一言。
「慣れといい、訛りといい直すところが多そうですね」
「お前はちゃんと裁縫を習えよ?」
ユノさんは無視して戸を閉めた。
「主も…女性の扱いには困ったものだ」
妖精と王子サマ。
お伽噺が、現実だと知らされた。
新しい職場はきっと大変なことになりそうな予感――
【完】