殺したいほど好きなんだ
ナイフの切っ先を向けてみるが、奴はけろりとした顔で、どう見積もっても動じていなかった。次は拳銃準備しておこう。
「なんでしたっけ?あなたの迷言」
「死ぬほど君を愛している。故に、殺したいほど好きなんだ」
そうして奴の手が私の首に回されたので、ナイフで軽く擦る。
うっすらとついた傷。痛みは微々たるものでも、彼の手は引かれた。
「それが分からないんですがねぇ。愛しているなら傷つけたいと思いますでしょうか、ふつー」
「“普通の愛”ではないのだよ、もはや。我の君への愛は行き過ぎた結果だ。我をここまで虜にさせた君が悪かろう。君は我を夢中にさせた。常に君が視界に入らなければ、息も出来なくなる。君が何をしているのかと、頭にはそれしかなく、“息をすることも忘れる”」
とか言うので、奴の視界に入らないよう横にずれれば、目で追われた。
「君は、我を殺せる生き物だ」
「あなたの目を潰せば、自然と殺せちゃいますねー」
「故に、死ぬほど愛している」
「故に故にって、中二病が好きそうな単語でございますよね」