淡恋~あいつがくれた恋~
そして放課後。三階の渡り廊下にて…。
私と藤橋が向かい合っている。
目を合わせることが出来ず、私はずっと下を向いていた。
どういう言葉をかければいいのかわからない。
ただ強く風が吹いている。
藤橋が切り出した。
「橋場…」
私は顔を上げ、ただ藤橋を見ている。
藤橋も私をみている。
「俺、お前のこと好きだ」
そう言ってあいつは恥ずかしそうにうつむいた。
私は一拍おいて深呼吸して言った。
「ありがとう。
でも…ゴメン。好きな人いるから。」
「………」
お願い黙らないでこの言葉がどれ程残酷かわかってる…わかってるけど…
「あんたのこと嫌いじゃないからね。勘違いしないでね。
だけど…好きな人がいるんだ。」
「………」
黙りこくって下を向いた藤橋に私はこう言った。
「ゴメン」
藤橋が顔を上げて尋ねた。
「久永?」
「ううん」
私は首を振った。
そしたらあいつはこう尋ねた。
「深谷?」
「………」
知ってたの…?
「そうか…。」
藤橋が言った。私はなにも言えない。
「お前があいつのこと好きでも。俺はお前のこと好きだから…!!」
「ごめんね…」
―――わたし前はホンとに惹かれてた。
私が慌てて切り出した。
「ねぇ、何でわたしなんかに…」
惚れたの?と言いかけた私を藤橋が遮った。
藤橋が微笑んだ。
「何でかなんて分かんないって!!だけど…」
目を反らして藤橋は言った。
「お前の笑顔、可愛いよ。」
―――どきっとした。
「今は笑ってくれないよな…。さすがに。」
「………」
「でも、俺の大好きな笑顔がお前の好きじゃない久永に毎朝盗られてるのは悔しいな…」
「久永はただ…
穏やかだから、話してて凄く楽なの。
部活の関係で前からよく話すし…
ただいい友達みたいな感じだから」
私の言葉に儚げにあいつは呟いた。
「久永はお前のこと気に入ってるみたいだけど…」
「ないでしょ。小阪言ってたよ。久永、小学校の頃好きな人がいてその人のこと言われたら、未だに弱いって言ってたよ。
今でも好きな子いるのに他の子気に入るとか浮気者じゃん!!」
私が笑っていった。
「マジか!!」
二人とも笑った。
「他の奴等…久永含めて誰にも言っちゃ駄目だよ」(笑)
私が口止めした。
「えぇ~っ!!つまらなっ!!」
「ちょっと!!」
慌てる私を見てあいつは微笑んで言った。
「じゃなっ!気にしないでな!」
藤橋は優しく、少し悲しげな笑みを浮かべて走ってった。
そんなあいつの優しさに胸が傷んだ。
「藤橋っ!!」
私があいつを慌てて呼び止めた。