ビター アンド スノウ


他の誰かを好きになった、だとか
私のどこかしらが気に入らない、とか


そんな直接的な理由は、言われなかった。


ただ、彼は一言、
「俺が、いけないんだ」、と。


自嘲的に、申し訳なさそうに、…苦しそうに、微笑んだだけで。


当然、そんなことじゃ納得いかなかった私は、感情任せに言葉をまくし立て、反論を試みたけど。


本当は、わかっていた。

話があると言われた時の、彼のまっすぐな視線。大事なことを発する前に見られる、少し右上がりになる、キュッと閉じた口元。しっかりとグーに握りしめられた手のひら。


その、全てが

彼の感情は確固たるもので、もう決して動くことはないんだと、物語っていたから。

…今まで1番近くで彼を見ていた私が、1番よくわかっていたから。



ーーシュンちゃんなんて、だいっきらい!


別れを認めたのと同然の言葉を放って、私は彼のマンションから飛び出してしまったの。


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