祓い屋花魁 参る!
第一夜 花魁は、常に冷静に
ここは花の大江戸。時は午の刻。
商人や住人が行き交う町並み広がる吉原通り。
「おのれ鷹尾〜! 一体わっちが何したというでありんすか〜っ!」
朝早くから吉原の店を賑やかにしたのは、12歳前後の可愛い少女。
「朝から何じゃ桔梗? わっちは今起きたばかりじゃというに…ふぁ~」
乱れた長い髪、着崩れた肌着を整えながら襖を開けると、そこにいたのは鬼の形相かと思わんばかりの顔をした、桔梗と呼ばれた少女。
「そりゃ怒りもするわい! なんじゃこの文!」
突き出されたのは昨夜桔梗に書いた文。
内容というと…。
《朝起きたら一福堂の苺大福を6箱、辰巳堂の最中を10箱。さらに、先より注文してあった簪を18本と反物を4本…って持てるわけないでありんしょーが!」
鷹尾はその文を見つめ、大きなため息をつきながら肘置きに身体を預けた。
「昨今の若造は根性がないでありんすなぁ? わっちが新造のときなんぞ、更にいける華までも持ったもんじゃ」
キセルに火を点け、紫煙を桔梗に吹き付けながら毒を吐くと、桔梗はさらに怒り始めた。
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