祓い屋花魁 参る!
「うぉのれ〜! 鷹尾に出来て、わっちにできないことはありんせん! できる袖振り新造だと思わせてやるでありんす!」
韋駄天のごとくその場から走り去ると、クスクスと笑いながらやって来る一人の花魁がいた。
「朝から恒例のイヤミでありんすか鷹尾?」
「菖蒲(あやめ)花魁じゃありんせんか。人聞きの悪いこと言いなんし?」
菖蒲花魁は、鷹尾ほど高みのある花魁ではないが、吉原に咲く花の一人だ。
反物屋の娘だった菖蒲花魁は、五つの時より吉原に売られ、鷹尾とは姉妹のように育った仲である。
部屋に入り、側女に茶と菓子を用意させた。
「菖蒲花魁、酒問屋の旦那から頂いた、南蛮菓子で良かったでありんすか?」
「ようおざんす蘭。一緒に食べるか?」
そう言われた蘭と言う、見た目10歳にも満たない少女。
おずおずと鷹尾に視線をやると、鷹尾は優しい笑みを見せた。
「蘭、美味いものは皆で食べると美味いんじゃ。お前もお食べ」
「ありがとうござりんす、鷹尾花魁!」
ちょこんと菖蒲花魁の隣に座り、皿に取り分け始めた。