祓い屋花魁 参る!
物珍しそうに眺めていると、菖蒲花魁がキセルを置きながら説明を始めた。
「何処ぞの国の伝統菓子らしくてな。奇天烈な名で、かぬれ・ど・ぼるど、とか申していたが、これがなかなか美味かったんじゃ」
「ぼ、ぼるどー? なんと奇天烈な名じゃ‥」
恐る恐る口に運ぶと、硬さの中にしっとりとした甘みが口一杯に広がった。
蘭は満面の笑みで頬に手を当てた。
「おおいしいでありんす〜! この世のものとは思えないくらい、美味しいでありんす〜!」
「これはまた、美味いものを頂いたでありんすなぁ? このような菓子は初めてじゃ」
高尾までもが目を輝かせて言うと、菖蒲はクスクスと笑った。
「お前でも食ぅた事のない物を貰って、わっちは少し鼻が高くなったぞ?」
高尾も笑いながら湯呑みを取り、静かに啜った。
「そりゃあわっちでも、珍しい美味いものを食えば笑みも溢れるものじゃ。人を何だと思ぅておる?」
「ん? なんと例えれば良かろうなぁ?」
菖蒲は悪戯じみた目をしながら高尾を見やり、笑いながらキセルを手に持った。
「食えぬ女じゃ」
高尾は笑いながら言い放った。
「高尾花魁! 言われた通りの品ぁ、持って帰って来たでありんすよっ!」
障子を足で開け放ち、目の前にデデンっと並べた。
汗を拭いながらドヤ顔で言うと、高尾は笑顔でキセルを折った。