Come Back Anytime
 やがて朗読が始まると、焦りの色を隠せず動揺する潤を見て、未由がなにやら面倒そうな顔をする。
 刹那、少し距離のあった互いの机をピタリとくっつけると、その中央に自分の教科書をのせた。

「……え?」

 そして、未由のすらりとした長い指が伸びると、

「いま、ここ」

 前のヤツが、いま朗読している箇所を示した。

 それから数分後。
 前のヤツが着席すると、潤の番が回ってきた。

 ふたりでひとつの教科書。
 そのため、起立を避け、座りながらの朗読。
 途中、潤が読めない漢字にひっかかると、隣で行を追っていた未由が、先生よりも先に読み仮名をささやく。

 やがて文章が区切りの段階をむかえると、安堵の溜息を漏らす潤に、

「バ~カ」

 容赦ない言葉を、未由は浴びせてきた。
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