Come Back Anytime
 一時限目と二時限目の間の休み時間。

「なんで教科書忘れるの? 信じられない」

 沈黙を貫いていたはずの未由が、踵を返すように捲し立ててきた。

「うるせーバカ。明日のヤツと間違えたんだよ!」

「ていうか、バカはアンタの方でしょ?」

 まったくその通りである。
 潤は返す言葉も見当たらない。

「……アンタ、今日一日どうすんの?」

「知るか!……」

 結局のところ、この日はすべての教科において未由の世話になる羽目になり、犬猿の仲と思われていたふたりが、顔と顔を寄せ、時に睨み合いながら過ごすこととなった。

 まったくもって未由に頭の上がらない一日となってしまったが、翌日から、またいつもの罵り合いが始まった。
 そんな調子で二ヶ月間、潤にとって気の休まる日が存在しなかったのは言うまでもない。
< 9 / 9 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop