純白のキルケゴール
「お買い物に行くよ、優名も一緒にいこうよ」
夕方、学校から帰った私に母は笑って言った。
「行きたい、行きたい、お菓子沢山買って!」
「ちょっとだけだよ?」
母が、また笑う。
何だろう、もう母の顔はボンヤリして良く思い出せない。
私が母と似ていたのは、目だけだった。
だからか、自分の目が鏡と対峙すると、今でも私は母を思い出す。
宝石や月を、そのままはめ込んだ様な丸くて綺麗な目。
けれど私の顔で、目以外に母を連想できるものは無い。
どうやら私は、父親似みたいだ。