夕暮れに、ごめんね。(4p)
石段
「そうそう、あそこから石段だった」
神社の脇の小径を登っていくと
城山にたどり着く。
揺れる木漏れ日、
遠くの喧噪、
青い草の匂い。
遠い記憶が次々とよみがえる。
あの頃は将来のことなんて想像もつかなくて、ただただこの街を出ることばかり考えていた。
この街を出さえすれば全てが変わる
そう信じていた。
「何年ぶりだろ。高校のときはよくここを走らされてたっけ」
最後の石段を登り終える。
「この街にはもう戻ってこないつもりだったのにな」
口を強く結んで振り向いた。
眼下一面に広がる街の景色。
大嫌いだったこぢんまりとした街。