どうして私を選んだの?【完】
*偽りの王子様
――――……
「はい!次、人魚姫のセリフ!」
体育館に芦田さんの声が響き渡る。
「え…と、ま、まぁ…なんて素敵なお方…」
「はい、優芽ちゃん!そこは、もっと王子を好きって気持ちをアピールして!」
ナレーター兼、現場監督の芦田さんは見た目と違い、何気にスパルタなんです…。
「あはは、へたっぴ!ちょーウケるんですけど!」
ケラケラと楽しそうに笑う菊池さんは、人魚姫のお姉さん役になった。
あの日から、私のことを敵対視してるみたい。
けど、まだ、私と遥斗くんが付き合ってるってことは知らないみたいで…(付き合っているのを知っているのは、ごく一部の人だけなの)。
バレた時が恐ろしいです…。
「…さぁ、人魚姫、王子と結ばれたければ、この薬を飲むんだね…そのかわり、あんたの声は私のもんさ!」
「キャー!早苗ちゃん、最高!!魔女役は、心配なさそうね!」
羽田さんは、魔女役。
おとなしそうに見えて、実は、中学の時、演劇部だったらしく、かなり演技が上手かった。
…私も見習わなければ…!