天神楽の鳴き声
「話が早くて助かるわ。…朱巫女、いえ、雛生のことよ」
「こっちに洛月の人達が来たわ、雛生さんを連れ戻そうとしてた…」

御茶を沚依から受け取り、口をつける。その御茶は昔と同じ味で胸がざわざわするようだった。
ごめんなさい、そう言って沚依は切なそうに笑った。

「私だけ、あそこから逃げてしまった」
「彼は元気?」
「ちょうど一年前に、亡くしたの。」
「そう、ごめんなさい、時間の流れを考えれなくて…」
「こっちこそ…」
「…雛生をみて、どう思った?」

沚依は御茶に口をつけた。そして穏やかに笑う、沚依の一重の目は線のようになる。その笑い方は昔から何も変わってはいない。

「あの二人に、ううん、日生に良く似てる。」
「ええ、破天荒でお転婆な所までそっくりなのよ。」
「あなたが、大事に愛情かけたのね」
「…厳しくしたつもりよ、それが、愛情故なのか、嫉妬なのか、わからないけれど」

沚依から視線を外して答える。いつも心につっかえている。

ー私と、日生はとても親しい間柄だった。日生と、ふたりの関係に嫉妬していた。

だからこそ、日生に雛生の世話を頼まれた時は驚いた。
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